プロローグ『未知の学園』その2

2021. 12. 24. 06:41TDR21V - 小説・Japanese novelized

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時計は8時59分を表していた。ぎりぎりに間に合ったのだった。

そして今、9時になり、彼らが見えた。

 

「あら、あなたたちもここの新入生ですか。」

「ほーら、やっぱりいるはずだといったじゃにゃいか!」

彼らの中で2人の女学生たちが僕らに近づきながら話をかけてきた。

敬語を使って話した女の子は紺色の紙で、神秘的なオーラを出していた。もうひとりの変わった言い方をした女の子の方はピンクのロングヘアーで、少し地味な服装をしていたが、だとして彼女が目立たないとは言えなかった。

「お前らもここの新入生?あの後ろの連中も?」

「ええ、ここの皆さん、お二人まで加えると16人で、みんなが今回6期生A組として入学した方々ですわ。」

「とにかく、これからうちら自己紹介するんだから、お前らもやってもらうにゃ!」

「あ、わかった。」

そう話した僕らは、ほかの生徒たちがいる内側に歩いていった。

 

「よし、これで16人全部そろったんすか。ではみんなひとりずつ順番に自己紹介をしていきましょう。まずは俺からっす!

紫色のコートと帽子を着た男性が勢いよく言った。

「俺は桂木花蓮(カツラギ カレン)、超高校級の科学者としてこの学校に入学したんす。鉱物はポテチ。どうぞよろしくっす!」

 

<桂木花蓮-超高校級の科学者>

 

「新聞で見たよ。フランスで最年少科学者として研究に打ち込んでるといわれたわね。こうして会えるなんて、幸運だな。」

青髪のトレンチコートの少女が話を続いた。

「じゃあ次は私ね。江戸川縁(エドガワ ユカリ)、超高校級の私立探偵さ。」

 

<江戸川縁-超高校級の私立探偵>

 

「自分をアピールするもんはあまりないけど、とりあえずよろしく。そして...」

エドガワさんがじっと見つめた視線の先にいる男は、こうしたところのない赤い洋服、緑色の瞳、茶色の髪をしていて、とても平穏な表情をしていた。

そんな彼にみんなが集中すると、その男はしぶしぶと口を開いた。

「...そなたが我をこう見るのも無理ではなかろう。そうだな、自分を紹介しよう。超高校級の殺人解剖学者の罪切剣(ツミギリ ツルギ)という。何卒よろしく頼むぞ。」

 

<罪切剣-超高校級の殺人解剖学者>

 

「てめぇみたいな吐き気が出るやつとは一緒に通いたくねーよ、学校は。」

「...」

ツミギリくんと自分を紹介した男は随分と気まずそうな顔だった。どうやら二人の間には何かあるらしい。

ていうか”殺人解剖学”ってどんな学問だろう。後で聞いておこう。

「そんなこと言わないでよ。」

ツミギリくんの隣に座っている背の小さき、青い髪の少女が言い始めた。

「石ヶ原美鈴(セキガハラ ミスズ)、超高校級の彫刻家。ツルギの、お友達。」

 

<石ヶ原美鈴-超高校級の彫刻家>

 

「トンカチ振ったらなんでも刻めるやつがおめーやったかい!こんなチビッ子とは想像もせんかったで!」

「...チビッ子じゃない。」

メガネをかけた金髪の女性はセキガハラさんに親しいっぽく話をした。いざとなると彼女は嫌がる様子だった。

「じゃあ、こんどはうちのでばんやね。うちは長崎佐倉(ナガサキ サクラ)、大阪から来て、変わったもんはねえやが、裁縫が特技やわ。」

 

<長崎佐倉-超高校級の裁縫師>

 

「こないだ服預けてみたけど、いい腕だったにゃ!今もそれ来てるにゃんだ!」

「おう、じゃあんたがあのミムラって子か。やっぱ似合う服やで!」

先話しかけてきた女の子がナガサキさんに話をかけた。どうやら二人は結構仲良くなりそうだ。

「じゃ、次はうちだにぇ?では。」

彼女は一度咳払いをして、話を続けた。

「超高校級のカウンセラー、三村琴子(ミムラ コトコ)。どんな話でも聞いてあげますわ。もちろん”こっち”の話も。」

 

<三村琴子-超高校級のカウンセラー>

 

「そして体全体が真っ白なキミ君!一番期待してるからぜひ行ってくれにぇ~」

「え、それって僕のこと..?」

ミムラさんが指で僕を指すと、みんなが僕に視線を向かった。今度は僕が紹介する番らしい。

「ええと、そっか。僕は一野崎正華(イチノサキ セイカ)というよ、よろしく。超高校級の作曲家として入学したんだ。」

 

<一野崎正華-超高校級の作曲家>

 

「作曲家って君のことか!ネットで毎日聞いてるし、この2年間トップだったな、俺も知ってるぞ!」

「ちょいと待ちな。悪いが、イチノサキがやったから俺もやってもらいてえ。

守里紗綾(マモリ サアヤ)、超高校級のボディーガードだぜ。必要なことあったら呼びな?力業は自信あるからよ。」

 

<守里紗綾-超高校級のボディーガード>

 

「そなたの才能はボディーガードか。」

「あぁ、最近は天皇のすぐそばで一人で活動してるんだ。自慢はないが、この活動のおかげで学校の勉強はほぼまったくやってないぜ。」

「政治家の丹徳ボディーガードか、なるほど。すごいな!」

マモリくんがいうと、サファリハットをかぶった男がバトンタッチをするように話を続けた。

「俺は見てる通り、新聞記者の仕事をやっている掛水頂上(カケミズ チョウジ)だ。主に有名人に関しての記事とコラムを書いている。時間さえあれば君たちのことも全部記事に乗せてみたいな。」

 

<掛水頂上-超高校級の新聞記者>

 

「記事ですね。では後で私のことを書いていただけませんかね。」

看取り色のエイプローンを着た人が自分を紹介した。

「主婦の仕事をしております、高橋有利(タカハシ ユウリ)と申します。こう見えても男なので、どうかまぎれないように。」

 

<高橋有利-超高校級の主婦>

 

「へぇ、君は主婦だったのか。」

「お前さんのブログ、よく見てるぞ。料理に関する情報とか、ほんとに役に立ってる。」

黒い学ランと白いマフラーを着ている黒髪の男性が声をかけた。

「俺は黒澤箱根(クロザワ ハコネ)、超高校級の囲碁棋士さ。よかったら高橋、お前さんとも一度やってみたい。」

 

<黒澤箱根-超高校級の囲碁棋士>

 

「ええ、いつでも構いませんので、どうぞよろしく。」

クロザワくんの提案にタカハシくんは快く承諾した。

「じゃ、アタシともやってみない?囲碁はアタシも得意なんだ。」

赤い紙の女性は少し不器用な日本語でしゃべった。

「あ、アタシの紹介忘れてたね。アンナ、カン・アンナっていうんだ。えっと、なんだっけ…そう、超高校級の分析力という才能として編入されたんだ。」

 

<カン・アンナ-超高校級の分析力>

 

「おめーが今回来るってゆう韓国人の編入生かや!この学校は韓国人をよく連れてくると聞いたんやが、本間やったのか。」

「日本語ってあんま上手にしゃべれないけどなー、なぜか知らないけど、選ばれたんだ。ていうか、なんで寄りによっちゃ分析力って才能だろう…」

とはいえ、まったくわからないほどではなかった。ネイティブみたいな発音もよくやれた。

「外国の留学生なら私もいます。」

体育服を着ている黒い肌の男性が手を挙げなたら言った。

「ダンケルク・マイトといいます。アメリカから来た超高校級のバスケ選手です。」

 

<ダンケルク・マイト-超高校級のバスケ選手>

 

「あのアメリカの留学生か!俺もバスケ好きなんだ、よろしくな!」

「あ、はい。」

ダンケルクくんの横に座っているオレンジ色の髪の少年が彼に声をかけた。まるで漫画の主人公みたいな髪形をしていた。

「俺は金田津次郎(カネダ ツジロウ)、昼は銀行、要はギャンブル。数多くの金額両替と会計、入出金など。金あるところにこの金田おりってことだ!」

 

<金田津次郎-超高校級のディーラー>

 

「お金が相当、好きなのでしょうか…」

「うん、大好きなんだ!」

「わ、私もお金、好きですよ、えへへ…」

「へえ、そっか!俺はどう、おねーちゃん!」

「雑談はやめとけ、ぼさぼさ頭と散髪。今は自己紹介の時間だからあとで話したら?」

アンナさんの指摘に二人はすこし萎縮する。散髪と呼ばれた銀髪の女性はちょっともじもじしたあと、自己紹介を始めた。

「あ、あの。記至薬(シルシ クスリ)です。薬剤師です。

 

記至薬-超高校級の薬剤師

 

「あぁ、悪いが、あとで髪整理しときなさい、薬売りさん。整理整頓されてないのはアタシは苦手なのさ。」

「く、薬売りって、そんな呼び方…許しません…」

アンナさんの言い方に向かい、シルシさんはぶつくさ言った。自分の仕事には誇りを持っているようだった。

「では、私(わたくし)が最後でしょうか。」

シルシさんの隣にいる夜空色の髪をした孤高な雰囲気の女性が最後に自己紹介をした。

「私は星影幸村(ホシカゲ ユキムラ)、超高校級の天文学者ですわ。」

 

<星影幸村-超高校級の天文学者>

 

「ただほかの人より星や宇宙にもっと興味を持っているだけで、才能はないのに近いますわ。ちなみにとなりのくぅちゃん、クスリさんとは幼馴染ですわ。」

「へぇ、星座とかが好きなのかな。良ければ今度教えてよ。私も興味あるんだ。」

「ええ、いくらでも。」

エドガワさんが意外と彼女に興味を持ったらしい。

「…自己紹介はとりあえずこれで終わったかな。」

 

「こうして今回の学生は16人か。つーか遅すぎるな、学園長とかほかの先輩たちも。」

「確かに、先輩たちはともかく最も大事な教師たちや学園長が遅いとはあり得ぬことだ。」

カネダくんとツミギリくんが順番に話した。確かに入学式当日の行事案内メールには一年上の先輩たちが舞台で校歌を提唱し、教師の紹介と学園長の訓話があるはずだった。今の時間を見ると、だれもが日程なんて気にしないように来ていなかった。

「そういえば、うちが目覚めた正門に肝心な警備員さんもなかったやで。いくらでもこれはおかしいやわ。」

「私が起きた売店にも店員さんがいませんでした。どう考えてもこんなことは…」

ナガサキさんとダンケルク君の言葉もある程度一理があった。

「それに教室に貼られていた鉄板とモニター、どう見てもおかしいよ。本当にここは月島学園なのかな?」

あんなこんなことを話している最中、すべての元凶がようやく姿を現れた。

「いやー、マジめんご!ちょっと個人的なことで準備が遅くなったんだよねー」

部隊の断層の後ろから何かが飛び出してきた。

半分は白く、半分は黒いあいつは…

 

「…クマ?」